広告媒体というのは、まぁ色々ありまして・・・
資金力があれば、雑誌広告やネット広告等色々やれるんですが、
こちらは弱小個人事業主なわけでして、宣伝広告費も効率良く使わないといけません。
やっぱり人間、足を使ってやらないとねっという事で、地域の住宅にしらみつぶしに入れこむポスティングが一番です。
ポスティングも言ってみれば単純作業なんですが、なんも考えてないと「ハテ?ここはさっき来たような」的なデジャヴュと「ここは一体何処でしょう?」的な迷宮に迷い込んでしまうのです。
この迷宮にはこんなモンスターも待ち構えてたり・・・
とっても危険きわまりないのであるっ!!
そして我々冒険者(ポスティング作業員)にとって一番の強敵は・・・・
そうっ!!マンションの管理人。
最近ではチラシ投函お断りのところが多く、特にマンションでは常駐の管理人さんが目を光らせ、行く手を阻むのである・・・・。
〜6月某日(曇り)〜
六月にしては肌寒い午前の池袋駅から少し外れた住宅街をいつものようにポスティングして歩き回る。
とあるマンションの前を通り過ぎ、管理人室の電気が着いてるのを見つけて、ちょっと躊躇してみたり・・・でも任務遂行の為には、やらねばならないのであるっ!!
意を決して、エントランスを抜け横目でチラリ・・・
『巡回中』の看板を見つけホッと一安心。
だが時間がない・・・管理人が戻ってくる前に仕事を終えてしまわなければっ!!
約60世帯のポストの右側から順に、手早く、そして正確に入れ込んでいくのである。
約1/3が終わった頃、後ろを管理人が通り過ぎる・・・
が、
何も言われない・・・気づかなかったか?でも、悠長には構えていられない。いつ戻ってくるか分からないっ!!気持ちは焦るばかりだが、注意されたときは「あっそうなんですか?すいません知らなかったんで〜」とか「ワタシ、ニホンゴヨクワカラナイヨ」とか色々言い訳を考えつつ一枚一枚また入れていく・・・
残り1/3をきったところで、ポンポンと肩を叩かれる。
『!っ』
恐る恐る後ろを振り返ると・・・・
先程の管理人だ・・・・
ここはやはり怒られるのだろうと観念した・・・
が、管理人はニッコリしながら『大変だね〜身体に気をつけてね〜』と缶コーヒーを俺に手渡した。
一瞬戸惑う俺を尻目に管理人は話し始めた。
『昔ね〜ポスティングやってたんだよ〜
ピンクチラシね・・・裏ビデオとかの・・・
女の人とか居ると、入れるの恥ずかしくてね〜
でもね、自分がポスティングしたところから沢山注文が入ると社長賞が貰えるんだよ〜』
と色々聞かせてくれた。
話を、聞きながらこちらもチラシをすべてのポストに入れ終わった。
最後に管理人は言った。
『本当は仕事上、注意しなきゃいけないんだけどね・・・・』
と言いながら胸のバッヂを指で指し
『ほらこれ見て、今日は僕、代行なの・・・代行の管理人』と満面の笑み。
心が和んだひと時だった。
再びポスティングを開始した後、『そう言えば』と鞄からさっきの缶コーヒーを取り出して飲み干し、今日の出来事を思い出し、ふと思う・・・
「俺がまいた地域から申し込み者が出たら、社長賞でるかな〜?Mahiroせんせ〜?」